スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

その6

今、体育館に入場しているのは一年F組。
いい加減新入生の入場だろうが飽きてきた頃に入場しているF組。
当時は部活動もしていなかったから後輩なんて気にしてはいなかった。

そんなF組の、やっと退屈な時間が、
式自体は終わらないにしても入場が終わろうとしている区切りの時に問題が起こった。

問題とはその列の最後尾にいた奴が、奴だったからだろう。
何を隠そうそこにいた「キッズ」が原因だった。

我らが二学年全体が騒然とする。唖然とする。
まさかあいつ…留年したのか?

F組の最後尾にしっかりと付いていた奴には何の違和感も感じなかった。
ハッキリ言って周りの反応が無かったら俺は奴に気付かずに見過ごしていただろう。
そして様々な所で皆が口にしている。

「留年」

と、そう口にしている。……留年?
…ははは……はははは…

そうか、留年か。奴は留年していたのか。奴の学力云々は知らないがここまで騒がれる奴だ。
何かしら問題があるのは明らかだろう。その問題が留年を招いたのだ、きっとそうだ。

ということはアレか、今の今まで奴に関して悩んでいた事は全て忘れてもいいという事か?
全て嘘、4月にちなんでエイプリルフール的なものと判断していいのか?
あんな奴ははなっからからいなかったんだ。
そうだ、あんな意味のわからない奴とあと二年も一緒にいてたまるか。
もう、もうあんな奴の事は考えなくてもいいんだなこれで。

さっきまでの俺よ、何が憂鬱な日々が始まった、だ?バカ野郎が。

あんな大袈裟な事を書いていみたいだが「憂鬱な日々」は今をもって「終了」した。
改め、これからの二年間は

「とっても楽しい日々」

に変更したんだ。つまり我らの勝ちだ。

何だろう?この今まで感じた事の無いこの高揚感は。
まるでこの世界で自分が最強になったようなこの感じ。
よく聞く中二病というものは常にこんな感覚なのだろうか、それはそれで素晴らしいな。
スポンサーサイト

その5

第2章「現実はいつまで経っても現実」

新学期も早々に憂鬱な出来事に出くわした昨日ではあったが、勿論二日目からもその高校生活は酷いものになった。何と言ってもやはり、奴は普通ではないのだろう。やっとの事ですし屋を回避出来たのにも関わらずこの仕打ち、一体誰を恨めば良いのだろうか。
さてさて話は唐突に昨日へ戻るのだが、奴に話しかけられ、急いで教室を出た時の事、クラス替えの当日であるから誰かも知らないクラスメイトが、

…キッズ……キッズ………

…ボソボソと話をしていた。だんだん俺もわかってきたが核心はわからない状態。そんな中で今、奴の事を説明しろと「誰かさん」に質問されたのなら俺はこう答えるだろう。

「やばい奴」

アバウトすぎてわかりにくいと思うのだが、これが一番奴を説明するには合っているのではないかと結論を出す。果たしてこの答えは合っているのだろうか?答えに辿り着いたのだろうか?真理の様なものを理解出来たのだろうか?しかし理解できたのなら、何で俺はこんなにも悲しい気持ちになっているのだろうか?

世の中には知らない方が幸せな事もあるのだと改めて今日、その身をもって経験したのであった。全くもってどうしようもない話である。

さて、また話は変わるのだが俺は今、この学校に限らずどこの学校にも有るであろう新入生との顔合わせ、をするというので全校生徒が体育館に集まっている中に俺はいる。

考えてみると去年はあっち側にいたんだよな…なんて一年の立場だった時の頃を思いだす。緊張していたな、あの時は。先輩たちの、特に男子の学ラン姿には圧倒されてしまっていた事を思い出す。
一年が経つのは早いものだと、入場してきた一年生たちを見て思う。

だが今の俺は新しいE組の場所でこう並んでおり、こうしてこっち側で一年生を見ている。進級出来たんだよな、としみじみしていいたのだが、そんな場合ではない。なぜ無意味に新入生を見ながら優越感に浸っている場合じゃないのかって?よく考えて今のこの状況を見てみよう。
そう、奴は…キッズはE組の教室で、俺の前の席に座っていた。番号順だからな。とするとこういう時の体育館に集められた時の並びも大抵は番号順だ。
となると今もあいつは、俺の前にいるはず…なのだが、俺の前には奴がいなかったのである。
なぜいないんだ?朝は確かにいたはずだ。気持ちの悪い奴の後頭部を朝っぱらから見てしまった記憶がまだ残っている。
いや、こんな事は考えるべきではない。危険な人物が近くにいないんだ。これは喜ばしい状況なのだろう。
自分にそう無理矢理暗示をかけ、気持ちを切り替える。

ともなれば心にも余裕ができるのである。今年の一年はどんなものなのかと気分は高みの見物である。
しかし一年なんかに実際の所興味が無い。あまり関わりたくないし、上下関係とかはめんどくさいので嫌いだ。
色々と高みの見物、だとか言ってきたが今は何も考えずに「ぼー」っと一年生が入場してきているのを見ている。やっぱり興味が沸かないな。
すると何だろう、いきなり周りがざわめき始めた。
新学期も始まって二日目だというのによくざわめくなこの頃。
「芝商生がざわめく頃に」…なんてタイトルが発売されそうな勢いだぞ。ざわめく原因に期待はできないが。

何が起こっているのだろうか。状況すらわからないまま、皆が見ている方向に必然的に目をやってみる。
…はぁ、これはざわめいてもしょうがないな。俺のいる2年の学級、その色んな所から「もしかして留年?」
という言葉がざわざわしていながらもハッキリと聞こえてきて、耳に入ってくる。
そしてなるほどなと思うのである。

その4

帰っていいですか、というか帰らせて下さい!
生まれながらにして運が悪いと思っていた人生だがココまでだったとは…恐るべし凶運。心の中で思いっ切り叫ぶ。
そして涙が…出ないけど心の中では洪水が起こっていた。切実に頼む、助けてくれ。


さてさて、その後の俺はというと終始無心だった。不思議だな。さっきまであんなに騒がしかったであろう俺の心は驚くほどに静かだった。これが絶望なのだろうか?年度の初めでもう絶望を味わってしまったのか?俺は?
担任が何かを話している。聞こえない。何を話しているのか聞こえない…。相当なショックを受けていた…


気が付いてみると、いつの間にか第一回目のホームルームが終わっていた…
記念すべき…でもないが新しいクラスでのホームルームが一瞬の内に終わっていたのだ。
ショックのダメージが残るもののホームルームも終わり自由が許された。段々と思考を再開できる程に俺の頭は回復をし始めた。
そうだ、まずは奴に関しての情報を早く集めなければ。
俺の頭はその時、その事で一杯だった。手は早めに討っておいて損は無いはずだ。備えあれば憂いなし。まだ十数年しか生きていない身分だが、その事に置いては十分に考えさせられているからな。    
これからやるべき事が見つかった時、今まで考えていた内容が一気に吹っ飛んだ。突然周りの空気が凍りついた気分だった。
「よろしく」…奴は、キッズは自分の席に座ったまま振り向き、こう言ってきたのだ。
初めて話す相手に対しては最もポピュラーな言葉であろう。俺だってこういう場面ならこの挨拶から始めるに違いない。しかし「よろしく」に、こんなに威力が有るものだとは知らなかった。言葉には力があるとはよく聞くものだがこんな所で体験するとは思ってもいなかった。
なんだろう高校に入ってからというもの、どうしようもなく不快にさせられる様な出来事ばかり体験している気がする。


話してはいけない。とにかく離れるんだっ!「あぁ…」などと適当に濁しながら返事をし、その場を離れる。もはや考えるまでも無い、本能に従って逃げた。情けない話だ。



何とか戦闘から決死の思いで離脱した俺は奴に関しての情報を集めに行く。戦闘中、いや戦闘前からあの調子だ。あんなにもマイナスのオーラを放っている奴に関して情報が集まらないわけがない。そう思っていたのだが、俺の予想に反して情報は全くと言っていいほど集まらなかった。情報は集まらなかった。情報の種類が集まらなかった。百種類の情報を俺が集めていたとするならその中の一種類しか集まらなかった。
「キッズと呼ばれているあの男、一体何者なんだ?」と言う俺のその問いに対し交友関係が広くないながらもその関係を総動員して皆に聞いた結果、返ってくる答えはどれも一緒だった。


「やばい奴」


その一択だったのだ。「やばい奴」ってのはもう十分と言ってもいいほど、一言ではあるが会話?を通して分かっている。会話をしなくても分かっている。だけど俺が知りたいのはそういう事ではなくて………

俺はこの日、何度この問いを繰り返したのだろうか。結局「やばい奴」以外に情報はこの日集まらなかった。
…あぁ、あまりにも情報が少なすぎる。当時は考えもしなかったが、これは奴が強敵だという事を示していたのだろう。


               …そんな感じで俺の、高校生活における第二の憂鬱な日々が始まったのだった。


第1章終


こんな感じで奴とは出会いました。本当に自分の不運と苗字を恨みました。
どの学校にも学級にもこんな奴の一人や二人いるとは思うけどさ、
そんな奴の後ろの席なんてましてや一人や二人なんですよ。
宝くじが当たってもいいような確率じゃないですかね?
当たっても嬉しくもない確率なんですけど。

その3


………前にいる…とりあえず状況を説明しよう。

 記念すべき1回目のホームルームが始まり、相も変わらず去年と同じE組の担任の先生様が新しいクラスの座席表を持ってきてまず初めに黒板に貼った。
「皆さんおはようございます。まあ、まずは各自、自分の席に座って下さい。自己紹介などはその後です。」
 挨拶もそこそこにという具合に指示を与える先生様。となれば我先に座席を確認しようとするクラスメイト達である。さっさと自分の席を確認して席に戻ればいいものの、なかなかスムーズに退いてくれない。奴が原因だったのかな?少し周りがざわめき始める…座席表を見て固まってしまっている人もいる。

「…キッズ…キッズ………」

 何なんだ一体!あいつは何なんだっ! 段々イライラしてきた。何が何だか分らない状況に追い込まれた時のストレスといったら堪ったものではない。
 注目の的である奴、この状況をいち早く把握しなければいけない為、原因の元の奴を確認してみる。
 さて、奴といったらどうだろうか。座席表を見に集まってきたクラスメイトたちがいるその一歩下がった所で前回と同様にニヤニヤしながら立っていたのである。
 …決定です。あいつとは関わらない方がいいと思う。出来るなら…いや、絶対に距離を置いた方がいいだろう。直感というやつか?情報も何も無いこの状況でしっかりと俺の中の本能は機能していたようだ。去年の体験がやっと効いてきた。

 皆奴に注目をしつつも自分の座席を確認した彼らは座席表の周りから去っていった。ここまでに時間は数分経過しているのだが、あいつは変わらず…ニヤニヤしている。

 なんだか急に負の感情が溢れ出てきた。頼むから俺の視界から消えてくれよっ! 本気で気持ちが悪い。よくいう「キモイ」なんてオブラートで包んだ生半可な物ではない。本気で気持ち悪い。生理的に受け付けない。人はこんなに短時間で他人を嫌いになれるのか?知らなかった…。
 
 そんなニヤニヤは人も少なくなってきたので自分の座席を確認出来たのだろう。ニヤニヤしながら自分の座席の方へ去って行った。
 早くも不快な気持ちになったまま、俺も自分の座席を確認する。俺の名前からすると五十音順だとこの辺りかな?と予想をたてる…小中と義務教育+高校生活1年間の経験のある俺だ。座席表を見て一瞬で自分の名前の書いてある所を見つける。
 窓際の列の前から二番目の席。去年とあまり変わらない自分の席、つまらない、とはいえ五十音順なんてこんなものか、変化が少ない。と思いながら自分の席を目指す。

そしたらどうだろうか……前の席に……奴が…居るのだった…………

 距離を置こうと思った矢先からこれかよっっっ!

続く

その2

今のこの状況を例えるなら、恐らくこの言葉が一番適切であろう。

「蚊帳の外」

 俺は今、初めて見たそいつの事を何一つ知らない。そんな俺だがしっかりとした確信を持っていた。そこに出来ている輪と、奴との間には見えないが分厚く大きな壁が存在しており、関わりの一切が、断たれているのだ。
 そこには気持ちの悪い空間ができあがっていた。
 そんな奴がいるというのに皆、奴に気付いていないのだろうか? いや無視しているのだろうか? 
 いや、だがそんな事はどうでもいいのかもしれない。問題なのはそんな中で、絶対に入れないであろうその輪の外でニヤニヤ笑いながら立っているその事実にあった。
 理解できない。何故そんな立っているだけで悲しい位置にお前は一人で立っているんだ? 何故その輪の中の会話で笑っている? 何故そんなに首が長い?
 最後の一つはネタだとしても、俺はその唐突過ぎて理解できない状況に苦しんでいた。去年1年を体験していたはずの俺が、軽く思考停止状態に追い込まれているだと? あり得ない…
 予想外の出来事に混乱している中、同様に奴を意識しているだろう近くにいた女子たちの、こんな話が聞こえてきた。

「あれってキッズでしょ…何で? 本当に?」

 彼女らの目は死んでいた。大袈裟ではなく、まるで世界の終りを見るようにそんな目で彼女らは奴を見ていた。
この辺りでやっと気付いた。奴を中心に軽く周りがざわめいているのである。そして色んな所から、

「キッズ…キッズ……」

と、皆そう口にしているのである。一体何なんだ…? この理解しがたい状況を作り出しているあの「キッズ」と呼ばれている奴は…
 小柄な体格にどこの床屋で切ったんだと思う独特で切りそろえられた短いその髪型、そして異様に長い首、そして「笑う○ールスマン」を連想させるニヤニヤ顔…

…どう見ても怪しい。

 この状況を見ていて奴を不審に思わない奴はまずいないだろう。いないとしたならそいつも「キッズ」、奴と同類の人間であろう。
 
 まだあいつが「新E組」メンバーであることは、確定ではないのだが、ここにいるということは恐らくあいつも「新E組」なのだろう。自分のクラスでもないその前で不審な動きをしているなんてどこの馬鹿野郎かと思う。
 そんな事で俺は奴を第一級危険人物として警戒する事にした。当たり前だよな、こんな状況にも関わらず何も身構えずにぼーっと奴を見ている人はいないだろう。ぼーっとしている奴がいたらそうだな…そいつをミスター、あるいはミス「平和ボケ」と命名しよう。
 
 ここで「去年の失敗」というものがその時俺の脳裏を過った。
「過去の失敗」そうすし屋については…(以下省略)

 俺の過去、元E組を知る者なら分かるだろうが、あいつのおかげでE組の数人は去年一年間を憂鬱に送る羽目になったのだ。黒歴史なんかがいい例えかもしれない。

 こういう事には慎重に取り掛からねばならない。ゆっくりと奴の動きを見て観察し、奴に関する情報を仕入れ、有効な対処法を見つけ出す…。やらないとやられる、そんな世界だという事を俺は去年体験した。

 心を鬼にしよう、そう覚悟が決まったそんな時、このクラスの担任がやって来た。それに合わせて輪を作っていた奴ら、その他のメンバーもどんどん教室に入っていく。

 とうとう「新E組」での初めてのホームルームが始まるのであった。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。